アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は、遺伝的なアレルギー体質と、肌の乾燥や外からの刺激、さらにはストレスなど、様々な原因が重なって起こっています。 したがって、患者さんによっては症状をゼロにすることができないこともあり、ひとりひとりの症状に応じたお薬で皮膚を良い状態にコントロールすることが目標となります。もちろん、適切な治療を続ければ、ほとんど症状がなくなることもしばしばあります。 具体的には、まず症状に応じた治療を行うことになります。
第一に、今ある湿疹を抑えるために塗り薬を使います。 炎症を抑え、痒(かゆ)みを鎮(しず)めるためにステロイドの外用薬をよく使います。 次に痒みを抑えひっかかないために、痒み止めと言われる抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬などの内服薬を使います。 それに、もともと過敏肌がありますので、皮膚を清潔にして、乾燥から皮膚を守るために保湿薬も使います。 この3つが基本的な治療になります。
このうち、ステロイド剤は副作用があって怖いという印象がありますが、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えるためにはステロイド外用薬は欠かせません。 もちろん、塗る場所や量、期間、強さを十分に考えて使わないと、皮膚が薄くなったり、血管が浮き出てくるなどの局所の副作用が見られることもあります。 特に、顔や首などに塗るときは、皮膚が薄いぶんクスリの吸収が良くなり副作用が出やすいので注意が必要です。 最近では、免疫抑制剤の外用薬も顔にはよく使われるようになりましたが、刺激感がありますので、必ず皮膚科専門医の指示通りに使ってください。
またステロイド剤には、強いものから弱いものまで5段階あり、ひとりひとりの症状に合わせてステロイド外用薬を選びますので、指示通りに使わないで、勝手に薬の量や種類を変えたり、突然使用を中止したりすると、逆に悪化させたり副作用を招くことになります。 しかし、世間で言われているような、顔が丸くなるとか骨がぼろぼろになるなどの副作用は、ステロイドを大量かつ長期に内服した場合にみられるもので、外用薬では起こりえません。
外用薬で炎症症状がコントロールできたら、乾燥から肌を守りバリアを作るために、また症状が悪化しないように、保湿薬によるスキンケアを行いましょう。 保湿薬はこすらない様に塗るのがコツで、特にお風呂上りには効果があります。 お薬を使っても、なかなか良くならない時には、血液検査などで症状を悪化させている原因を調べる必要があります。 悪化する原因としては、乳児では食事アレルゲン、小児から成人では環境アレルゲン、特にダニやハウスダストなどがあります。 その他に花粉、衣服の素材、ストレスなども年齢に関係なく悪化因子になります。
次は日常生活での注意点です。 まず1つ目に、入浴やシャワーで皮膚を清潔にしておくことが大切です。 汗をかくと刺激物質が入りやすくなりますし、汗自体が肌を刺激します。 石鹸は肌にやさしい弱酸性のもので、よく泡立ててやさしく洗いましょう。 ナイロンタオルは使わず、石鹸やシャンプーが残らないように十分洗い流しましょう。 熱いお風呂は痒(かゆ)みが増すので避けましょう。
2つ目は衣服についてですが、刺激のある衣服は着ないことが重要です。 肌に触れるものは吸湿性のよい木綿(もめん)が一番で、洗濯はすすぎを念入りにしましょう。
3つ目は皮膚の保護についてですが、入浴・シャワーの後に外用薬を塗るのが効果的です。 また、室内はこまめに掃除をし、適切な温度や湿度に保ちましょう。 ダニ、カビ、ハウスダストはアトピー肌の大敵です。 爪は短く切り、できるだけ患部をかかないようにしましょう。
アトピー性皮膚炎は年齢とともに軽くなったり、治ったりすることもありますが、症状が長く続くこともあります。 アトピー性皮膚炎になる体質をすべてなくすことはできませんが、適切な治療を受けて炎症を鎮(しず)め、根気よくスキンケアを続けることにより、皮膚を治ったと同じ良い状態にコントロールすることはできます。
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